お笑い批評② 「笑い」への好奇心から考える「ドキュメンタル」と「M1-2017」

まずドキュメンタルとM12017のジャルジャルが自分のなかでどのような対比になったのかということを説明したいと思います。そもそもこの対比が破綻してしまった場合、この論考をどうまとめればいいかわかりません。そしておそらく破綻すると思います。

ドキュメンタルの新しさは「なぜ笑うのか」の追及

ドキュメンタルとは、アマゾンプライムで開始した松本人志のバラエティ番組です。10人の芸人が招集されて6時間密室空間に閉じ込められます。参加者は参加費として100万円を支払います。笑った人間は脱落となり、最後まで残ったものは1000万円の賞金を受け取ります。この番組はとても実験的です。というのも企画的にはにらめっこ企画なのですが、主催である松本人志が実験的と称し、笑いの分析を試みているため、実験的な企画となっているのです。だからドキュメンタルでの下ネタは、単なる下ネタではなくなり、なぜ下ネタで笑ってしまうのかという問いが生まれます。ただ笑うだけでなく、なぜ笑ったのか?という知的好奇心を満たしてくれるのです。

もともとガキの使いの「笑ってはいけないシリーズ」において、笑うことが禁止されているのにもかかわらず休憩所での他愛のない会話で出演者が笑ってしまい、また視聴者にも印象にのこる結果になったことがありました。そういった現象は深く掘り下げられることはありませんでしたが、あれはなにがおもしろかったのか、という追及は今までのバラエティ番組になかった要素だと感じます。

M1の審査は「あの笑いって何?」という好奇心を満たさない

私はドキュメンタルをシーズン3まで観終わったタイミングでM12017を鑑賞しました。出場者の漫才はどれも今までの漫才スタイルを更新したものとなっており非常に楽しむことができました。

なかでもジャルジャルの漫才は、かろうじて漫才というスタイルを残しつつ、新しい話芸の形を提示しました。それは実験的なもので評価が難しいのも事実でした。彼らはTVの視聴者にも、会場の観客にも確かな感触を残しまたのですが、ファイナルに残らず敗退しました。そして多くの人に「あの漫才はなんだ?」という好奇心を残す結果となりました。

私はその疑問に少しでも答えるのが審査員であると思っていました。しかし審査員のコメントはみなの期待を応えるものではなかったと感じます。もちろんネタをみた直後に詳細なコメントをすることは難しいでしょう。であるのならば大会終了後にコメントを残すことが誠実な対応ではないかと感じます。いや誠実とかの話ではなく、視聴者はみな知りたがっているという事実があるのです。

さて、なぜそれがM1と対比されることであると感じたかというと、ジャルジャルのネタを、そのときに審査員の誰もが、みなが納得する形で解説することができなかったからです。しかし視聴者はみな笑いへの好奇心をうみだしているのにも関わらず、その好奇心を投げ捨てるような、そんな不誠実さをかんじました。

博多華丸大吉の大吉さんはラジオで決勝のネタすべてを解説していました。公表はしていませんが、項目ごとに点数をつけて採点しているそうです。その項目をすべて公表すれば大会にもダイナミズムが生まれるのでは、と感じます。

https://www.youtube.com/watch?v=3x5oDFJ4ZIg

採点のショー化の必要性

そもそもとして漫才・お笑いに点数をつけるというところから端を発している大会です。それがいかにおかしいかは大御所の芸人の方々に指摘されています。であるのならばその点数をつけることに徹底的に向き合い、その部分もしっかりとショー化して観客の好奇心と向き合うべきだと感じます。

例えば最近流行の兆しをみせているラッパーたちによるMCバトルというジャンルですが、全国大会であるKOKは、審査の不透明さを受けて、採点のシートを事前に公表しています。

MCバトルの全国大会の審査の歴史をたどると、〇〇〇〇年までは審査員による審査のみだったのですが、出場者の一人「般若」が準決勝の「fork」戦にて、審査員の審査が不服として、観客に勝敗の決定を求めた出来事がありました。その1年後に観客の歓声の大きさと、無作為に選ばれた陪審員の判定により決定するスタイルに変化しました。

しかし〇〇〇〇年UMBが分裂、独立したUMB(KOK)が審査員と観客の歓声によるジャッジシステムに変更しました。これは観客の判定のなかに専門的な審査を導入することで、競技自体の技術が向上していくためといっていいでしょう。

まとめ

どちらかというとドキュメンタルとM1の対比というよりか、M1には審査のショー化が必要だ、という分量が多くなってしまいました。まとめますと、ドキュメンタルには「笑い」への好奇心に答えているが、M1には「笑い」への好奇心に答えることがない。「笑い」への好奇心に答える審査部分のコンテンツの変化が必要だと感じます。

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