日常は何もない、だからどうした?『そうして私たちはプールに金魚を、』レビュー

それらしき界隈でひそかに話題になっている「そうして私たちはプールに金魚を、」をvimeoで鑑賞した。 ちなみに私は1度も聞いたことがなかった。さいたま県狭山市で過ごす4人の女子中学生が、学校のプールに大量の金魚を放流した実際の事件がモチーフとなっている。

少女たちはそれなりに狭山で終えるありきたりな人生というものに抵抗があるが、それをどのように変えればいいかわからないし、だからといって何かに打ち込んだり、それを打破しようとせず過ごしていく。その様子は真綿で首を絞められていくような、なにも起きることのない地獄でただ何もせずいるようである。

それとは対照的に不自然に美しく切り取られる狭山の日常は違和感でしかない。いわいる「インスタ映え」するシーンを寄せ集めたようになっている。どんなに日常をフォトジェニックに切り取っても、それらが、彼女たちが予想する「どうしようもない人生」を変えるものではない、というのが皮肉になっている。

ところでインスタというキーワードが登場したが、それ以外にも30分という作品時間の短さ、それを4チャプターに分割した作品形態、ネットで無料公開、というスタイルはショートコンテンツが氾濫する現代のSNS感覚が取り入れられているといえる。

少女たちはプールに金魚を放流するために学校へ疾走するのだが、そのシーンでギターサウンドと粗々しいドラム音が鳴り響く。そのさまは「害虫」のクライマックスのオマージュのようであるのだが、その後は全く異なるものとなっている。少女たちの日常には最後まで何もないことが強調される。

しかし少女たちはそれなりに楽しんでいるように見える。多くのオジサンたちが「インスタの中だけキラキラした少女たちの日常」と揶揄したとしても、それを簡単い跳ねのけてしまうほど、作品の映像はグルービーで圧倒的だった。そして「インスタの中だけキラキラした少女たちの日常」なんてことは少女たちも承知しているだろう。これがわたしたちの日常だ!と高らかに宣言したのがこの映画なのだ。

それなりに話題になっており、ツイッターではラブ&ポップと比較するつぶやきなどもみつけた流れで、害虫や台風クラブなどを再鑑賞した。

台風クラブは台風がきた夜に学校に泊まり、どしゃぶりの雨が降る校庭や体育館で、下着姿で踊って見せる青春映画だ。それにくらべてプー金は、プールが暗くて金魚も見えなく、結局謹慎となり、何事もなく終わってしまう。台風クラブのカタルシスには到底たどり着けないヨネ、と自嘲ぎみに自己分析しながら、でもそれなりに楽しんでるよ。という声が聞こえてくるようだ。

ガブリシャス

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